Sarracenia flavaのバラエテイについて

石高 和弘

Sarraceniaの原種8種類のなかでもS.purpureaについで広い分布域を持つこの種は、変異の幅の広い事でも知られています。 条件の良い自生地では最大120cmにも達するものもあるそうで、見事なトランペット状の瓶子葉を立ちあげる様は豪壮であり、私のお気に入りのSarraceniaでもあります。また最近様々な変種が出回っており、分譲リストに胸を躍らせているのは私一人ではないはずです。しかし同様のフォームが様々な品種名で出回っているのも事実で、これらの整理も今後の課題となるでしょう。
今回私の乏しい知識の範囲で今まで見聞きしてきた品種の特徴をまとめてみましたので、特にビギナーの方（私もそうですが）の参考になれば幸いです。ただ、最初に言っておきたい事は、 Sarracenia というのは非常に種内変異が大きく、同一株から実生でばらまいた場合でも実に様々な形態のものが出ます。これらに一つ一つの固有名詞をつける事は不可能に近く、普通は形容詞で区分します。例えばHeavily Veind very Large Form であれば葉脈の濃いとても大きくなる系統というわけです。これだと非常に分かり易く、問題も無いのだが、業者によっては固有名で発表しているものも多く、混乱のもととなっております。

１.Ornata
米国のリストに良く見られ、グリーン系でふたが大きく網状に脈が入る。筒は太目でやや大型になるが、一説では真のOrnataは倭性だともいわれる。

2. Rugelii
一般に出回っているのはOrnataをやや小型にした感じだが、ＣＰＮの記事を見ると大型で黄緑のふたにのど元だけが赤紫に染まるとされている。

3. Maxima
名前のとおり、大型で80cm以上になる。背が高いだけではなく、がっしりしており、Flavaらしい見事なトランペット。まれにグリーン系もある。

4. Yellow Trunpet
黄色味の強い鮮やかな筒で、のど元だけが赤くなる。純粋なred throat とも言えるかもしれない。

5. Atro Purpurea
米国のリストに見られる小型の系統で、筒の上部２／３くらいが赤紫色に染まる。個体差が激しいようで、きわめて赤いものもあるようだが、我が家のものは縦筋が入り、のど元に赤いしみが浮き出る程度にしかならないが、ふたが大きく形の良いトランペット。英国のリストにあるPurpure tube も同様のタイプかどうか現在輸入を試みている。

6 Red Burgundy
英国のリストで、直訳すると「フランス南東部のバーガンデイ産の赤ワインのように赤い」で、リストではterrific Red Form=(恐ろしく赤い系統)とあるが、それほどでもなく、普通のred from　程度で脈が強く出て、日照が強いと全体が赤くなる。我が家にあるのは２系統で、一つは縦筋が入る程度で赤くならず、ふたがかぶさり気味であまり剣葉を出さない。もう一方の赤い系統とは形も異なり、ラベル違いも考えられる。

7. Red　form
赤flava系統を総称してred formもしくはred tube　と呼んでおり、それぞれの特徴をとってgiant red tube, red tube green lid all red等と区別しているが、差は明確ではない

８．Red　pitcher
英国のリストでPurpureaの血を引いている様にも見受けられ（葉がロゼット状に出る）わりあい寸胴で、蓋の付け根の巻き込みが大きい。さほど赤くならず､上部を中心に外側全体が薄く赤銅色に染まるが，Copper topとは異なる。

9. Heavily veind
葉脈が濃いという意味だが､脈の入り方が形に様々なタイプがある。我が家にあるものは全体に濃い海老茶色の脈がびっしりと入り、alataの血を引いているようにも思え、また花は何と赤色。大型のものはvery heavily veind formと呼ばれている。

10．Ｒed vein
heavily veindまではいかないが、比較的脈の濃い系統。また英国のリストにもある、Varornata　superbaはこの大型系と思われるが、まだ確認していない。

11.Red throat
　喉が赤いの意味だが、最近導入されているタイプは皆、葉脈が浮き出るものばかりで、純粋なred throatは入って来ないようである。以前は基本種のように思われていた本種も､今では稀品とされている。

12.Red neck
豪州のリストで、オールグリーンの筒に口(喉)だけが赤く染まる。red throatのシノニム（同義語）と考えてよいが､こちらの方が系統が良い様である。

13.Purple throat
まだ葉が小さいので良く分からないが、書籍｢サボテン・多肉・食虫植物｣の写真に近いタイプではないかと考えている。

14. Copper top
蓋が銅色の意味で、色の濃いものはDeep copper top and well veind等と呼ばれている。我が家のものはやや寸胴で口が大きく、先が尖る傾向がある。

15. All green
葉脈が入らない緑一色のタイプで､口の先が尖り、多少屈折する傾向がある。

等だが､同じ品種名でもかなり固体差が激しく、業者によってはラベル違いのものを送ってくる場合が結構あるので､区分は難しいように思います。また私が思うに純粋なFlavaというのは意外と少なく、遠い昔に交雑が行われたものが長い年月の世代交代を経て､現在のFlavaっぽい形？に戻ったのではないかと考えます。赤い花が咲くものなどはまさにそれで、これを珍品と崇めるか、雑種として片づけてしまうかは、それを承知した上で個人の判断に任せても良いのではと思います。又異論があれば御聞かせください。いずれは閻魔帳の様なものが作れればと思っております。